医療事故・医療過誤の防止~インシデント報告システム~

医療事故・医療過誤防止シリーズの第5弾です。(今回でこのシリーズは終わりです)

前回は「個人的ではなく、組織的に防止策を徹底する」ということを書きました。
そのためには起こったインシデントを報告するシステムが必要となります。
そこで、多くの病院や診療所・施術所で導入されているのが「インシデント報告システム」です。
アクシデントの背景には多くのインシデントが発生しています。
そのインシデントを「インシデントレポート」という形式で報告します。(インシデントレポートに関しては今度書きますね。)
そのインシデントレポートで報告された事例について、スタッフ間のミーティングで話し合います。
・何が起きたのか?
・どう対処したのか?
・どうして起こってしまったのか?
・どういう状況で起こったのか?
・どうすれば防げるのか?
などを、スタッフ全員で考えます。根本的原因をみんなで分析するのです。
その分析結果を基に得られた対策を臨床現場にフィードバックします。

こうすることにより、アクシデントが起こる前に学ぶことができ、対策を講じることができます。
アクシデントが起こる仕組みを学び、対策を講じることによって、アクシデントを減らせるのです。

ここでとても重要なことがあります。
それは、「インシデントを起こした人を責めない」ということです。
責めてしまうと誰も正直に話さなくなりますからね。

以上がインシデント報告システムの概要です。流れをまとめると…

①日常業務        ←←←←
↓               ↑
②インシデント発生・報告    ↑
↓               ↑
③ミーティング・分析・周知   ↑
↓               ↑
④日常業務にフィードバック→→→↑

インシデント報告システムは、1人治療院でも活用できます。むしろ、1人だからこそ活用すべきです。
ルーチンワークをこなしていくうちに記憶は薄れていきます。記録に残すことにより後々振り返る事ができ、日常業務にフィードバックできますよね。

具体的なインシデントレポートの内容ですが、それは別の機会に…
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医療事故・医療過誤の防止~失敗の原因~

医療事故・医療過誤防止シリーズの第4弾です。

前回は、1件のアクシデントの背景には多数のインシデントがあることを書きました。
インシデントを防げばアクシデントは起こらないのというものです。

ちなみに、アクシデントの原因は以下の2つに分けられます

1.誤認識(行為を意図した段階ですでに生じているもの)
  例)一般に危険と言われている深度を超えて刺鍼し、臓器を損傷した。
2.うっかり・ど忘れ(行為を実施する段階で生じるもの)
  例)鍼を抜き忘れてしまった。 

1は教育によって防ぐことができます。2は、あまり教育の効果は期待できませんが、刺鍼本数と抜鍼本数を確認しないことを容認している環境に問題がありますね。

ではインシデントはどうやって防ぐのでしょうか?

少し前までは「医療事故は起こらないもの」という考え方が一般的でした。そのため、医療事故を起こした人を処罰・排除すれば医療事故は減ると考えられていたのです。
しかし最近では、医療事故は日常診療においてしばしば発生していることがわかり、「人間は間違えるもの」という考え方に変わってきました。
そのため、防止策として「犯人探し」ではなく、「なぜ起こったのか」に焦点をあわせるようになり、「個人的」ではなく「組織的」に防止策を徹底するようになりました。

そこで導入されているのが「インシデント報告システム」です。

次回はこのインシデント報告システムについてお話します。
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医療事故・医療過誤の防止~ハインリッヒの法則~

医療事故・医療過誤の防止~ハインリッヒの法則~


医療事故・医療過誤防止シリーズの第3弾です。

皆さんは「ハインリッヒの法則」というものを聞いたことがありますか?
この法則は、ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒという人が統計学的に調べ、計算し、導いた労働災害における法則です。
(時々、教科書などには「経験則」という嘘が載っていたりしますが。。。)

ハインリッヒがある工場で発生した労働災害5,000件について調べた結果、「1件の大きな事故・災害の背景には29件の軽微な事故・災害があり、その背景には300件のヒヤリ・ハットがある」という法則が導き出されたのです。
つまり、「大事故と軽微な事故と、ヒヤリハットのの比率は1:29:300で発生する」という法則を見つけました。 言い換えれば、「大きな事故・災害は、軽微な事故・災害を防いでいれば発生しないものであり、軽微な事故・災害は、ヒヤリ・ハットを防げば発生しない」ということです。

臨床現場でも同じです。例えば…

・鍼による臓器損傷が起きる。(アクシデント)
・それ以前には鍼を抜き忘れて患者さんを帰してしまうことなどが数件あった。(軽微なアクシデント)
・その背後には、抜き忘れに気付いて慌てて抜いたり、患者さんに指摘されてから抜くようなことが多々あった。(インシデント)

など、上記のような医療事故・医療過誤の背景には必ず多数のニアミス(インシデントやヒヤリ・ハット)が起きているはずです。

皆さんも細かい事まで思い返してみれば必ず1つや2つあるはずです。
次回はどうやってこれらを防ぐかを考えてみます。
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