健康保険

保険のおはなし(保険料の請求)

これまで、健康保険で払われるお金がどのように集められているのかを書いてきました。
今回はその逆で、どのように請求するかを見てみます。

保険料を請求するときには「償還払い」と言われる方法と「受領委任払い」と言われる2種類の方法があります。
償還払いは患者さんが施術費用の全額を支払い、健康保険組合など「療養費請求書」(正式名称は組合ごとに違うこともあります)に施術者の証明を受け、患者さんが健康保険組合に療養費を請求する方法です。この場合、施術者は健康保険証を確認する必要もありません。
それに対して、もう1つの「受領委任払い」は、施術者は保険証を確認したうえで、施術料の3割(保険の種類によって変わります)を患者さんから受け取り、残りを健康保険組合に請求する方法です。

これは、どちらか好きな方を選べるのではなく、健康保険組合によって支払方法が決められていますので、どちらの方法かわからない場合には該当の健康保険組合に確認してください。
また、当然ですが、あんま・マッサージ治療院(あんまマッサージ指圧師)に施術を受けた場合、疲労回復やリラクゼーションを目的としたもの・疾病予防のためのマッサージや保険医療機関に入院中の場合は療養費の請求はできませんので、注意してください。

これらの方法は、もともとの原則としては償還払いが原則です。
しかしながら、償還払いの場合、患者さんは施術料金を立て替えなければならず、これでは患者さんに一時的に経済的な負担をかけてしまいます。
これを軽減し患者さんの便宜を図る目的で制度化されたものが「受領委任払い制度」です。
受領委任払い制度は、「施術者が請求する権利」と考えている方もいらっしゃいますが、もともとは患者さんの権利です。間違えると世の中の仕組みを分かっていない恥ずかしい人になってしまうので、覚えてくださいね。

次回は受領委任払いの書類の書き方を解説します。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
0

保険のおはなし(保険料の徴収)

新年度になり、初々しい社会人が朝夕の通勤電車に乗っている姿を見るようになりました。
皆さんが社会人1年生の時はどんな新人でしたでしょうか?

今回も社会人であれば誰もが払ったことのある健康保険についてです。
前回までは健康保険の種類を書きましたが、今回はどのようにして保険料が徴収されているかを見てみます。
「財源が枯渇する」という意味も分かるかと思います。

健康保険料はすべて、自分たちの払っている健康保険料で賄われていると思っている方。間違いです。
実は健康保険料は健康保険組合であれば、自分で払っているのと同額を会社が払ってくれています。
つまり自分で、5,000円払っていると、会社も5,000円払っており、健康保険組合には10,000円が健康保険料として納められているのです。
同じく、協会健保の場合、国などから公費負担と言う形で健康保険料の財源となるお金が出ています。
それぞれ、このお金をやりくりして医療機関などから請求される保険負担分の診療費などを出しています。
絵にすると次のようになります。


多くの鍼灸院にコンサルで伺うと「保険料は一定額さえ払っていれば、あとは国が払ってくれる」と勘違いしている方が非常に多いです。
この絵を見ると、財源が無尽蔵にあるのではなく、個人や会社から支払われた保険料で賄われていることが分かるかと思います。
「レセプトさえ出せば・・・」という考え方をしていると、いつか健康保険組合も財源が枯渇し、我々も貰える者も貰えなくなる恐れがあります。

商売の基本はサービスに見合った対価です。
ズルをせずに、しっかりと自分のやるべきことはやりましょう。

次回は自分のやるべきことをやっている前提での、保険料の請求の方法を図にします。

hokenryou

 

これまで、鍼灸サポートは5の倍数の日に更新してきましたが、「更新日が分かりにくい」というご意見を頂き、検討した結果、毎週水曜日に更新することとします。
引き続き宜しくお願いいたします。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
0

保険のおはなし(保険の種類)

「保険」と言うと何を思い浮かべますか?
「死亡保険金」と思う方、正解です。
「医療機関での支払いが減るもの」と思う方、正解です。

ただ、この2つには大きく違うところがあり、前者は生命保険や損害保険などが該当し、後者には医療保険や健康保険が該当します。
もちろん我々が扱うのは健康保険ですので、健康保険の仕組みについて解説していきます。

我々が扱う医療保険は主に2つに分けられます。
1つは公的医療保険、もう1つは民間医療保険の2種類です。
公的医療保険とは健康保険のことです。
健康保険は、公的な制度で基本的には全員が強制加入です。
これによって、「病院での支払いは3割」という話が出来上がります。
それに対して2の民間医療保険は、民間の保険会社が販売している医療保険です。
民間の会社が販売している商品ですので、強制ではなく入りたい人が申し込んで入るタイプの保険です。

健康保険を管理監督するのは、全国健康保険協会または健康保険組合です。
また国民健康保険を運営しているのは市町村です。
この市町村を保険者といい、健康保険に加入する労働者を被保険者といいます。
健康保険は主にサラリーマンなどが加入し、国民健康保険は自営業者や年金生活者などが主に加入します。

今後は、健康保険の協会や組合ごとに見てみます。
大きく分けると保険者には3つの組織があります。
1)全国健康保険協会
2)健康保険組合
3)市区町村

1)全国健康保険協会
全国健康保険協会が保険者となっている場合の健康保険を全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)といいます。
保険者である協会は、被保険者の保険料を適用事業所ごとに徴収したり被保険者や被扶養者に対して必要な社会保険給付を行ったりします。
2)健康保険組合
健康保険組合が管掌する場合の健康保険を組合管掌健康保険といいます。
3)市区町村
市区町村が保険者となっている場合の健康保険を国民健康保険といいます。
どれであっても主な機能は変わりません。健康保険の主な機能は次の通りです。
•医療費の自己負担割合は1~3割
•高額療養費制度
•傷病手当金(国民健康保険にはこの制度はありません)
•出産育児一時金

ここまでザックリとですが、自分たちの扱う保険にどのような種類があるか理解できましたでしょうか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
0

保険のおはなし1(概要)

今年度もあと1週間ちょっとで終わりです。
皆さんにとってどんな1年だったでしょうか?そして来年はどんな1年になるでしょうか?

今年は業界としては保険請求の不正が話題になることもありましたが、そもそも保険の話は正しく理解されていますか?

病院やクリニックでは、保険の取り扱いをしているところであれば、どこでも保険診療が受けられますが、鍼灸の場合には保険を使える条件があります。

まず、症状。
次の症状については鍼灸で健康保険が使えます。
1.神経痛…例えば坐骨神経痛など。
2.リウマチ…急性、慢性で各関節が腫れて痛むもの。
3.腰痛症 …慢性の腰痛、ギックリ腰など。
4.五十肩…肩の関節が痛く腕が挙がらないもの。
5.頚腕症候群…頚から肩、腕にかけてシビレ痛むもの。
6.頚椎捻挫後遺症…頚の外傷、むちうち症など。
その他これらに類似する疾患など。

そして、次のような条件もあります。
1.該当の症状は、先に医師の治療を受けており、医師の鍼灸での治療に対しての同意書が必要です。
2.同意書は3ヶ月毎に医師の同意が必要です。(再同意の場合は同意書ではなく口頭での同意でも問題ありません。)
3.保険で鍼や灸を受けている間は、該当の症状については病院やクリニックにかかれません。(他の病気などは問題ありません。)
4.保険の種類によっては、保険組合などに患者さん本人が手続きをしなければならないものもあります。

これらの条件をすべてクリアして初めて鍼灸では保険を適用できます。
同意書は時々ですが「再同意があった(ことにして)治療を続ける」という方もいらっしゃいますが、これはやってはいけない行為です。

ここでは、あえて「鍼灸」としましたが、マッサージの場合はどうなるのでしょうか?
基本は鍼や灸と同じですが、対象になるのは、「関節拘縮」「筋麻痺」の2症状に対する施術で、骨折や手術後の障害、脳血管障害の後遺症などのみに保険が使えます。
単なる肩こりや疲労が理由ではマッサージは健康保険の対象にはなりません。
しかし、マッサージの場合、鍼や灸と違って同一の症状で病院やクリニックを受診していても健康保険を使うことができます。

患者さんの身になれば、負担を抑えて治療を受けたい。鍼灸師としては売り上げを上げたい。
どちらにも思いはありますが、健康保険も財源には限りがあります。本当に必要な人が必要な時に医療を受けられるようにするために、不正がなくなるようにしたいものですね。
次回からは保険の仕組みを解説していきます。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
0

傷病名と症状

傷病名と症状の違いはしっかり理解できていますか?

先日、コンサル先でこんな事例がありました。
医師に同意書の記載をお願いするための書き方サンプルを作成したところ、傷病名に「後遺症」と書かれていました。

これは傷病と症状が良く分かっていないと言える例です。
療養費の支給申請をする際に傷病名と症状の違いが分かっていないと馬鹿にされてしまいますし、医師に診察を依頼したとしてもこの違いがしっかり分かっていなければ、「基本も分かっていない人」として医療従事者ともみなしてもらえないでしょう。

まずは、傷病と症状の違いを整理してみます。

「傷病」
「傷病」とは「疾患」と「外傷」を総称した名前です。
正常な身体機能や形態が何らかの原因によって損なわれた状態のことを言います。
例えば、「骨折」であればあきらかに外傷なので、傷病名になります。




「症状」
症状は病気にかかったときに認められる変化を総括した名前です。
発熱、悪寒などの「自覚症状」と検査をしてわかる「他覚症状」があります。
たとえば足を骨折したことにより腰に痛みが出ている場合、腰の痛みは症状です。


大まかにはこんな感じですが、別の言い方をすれば、「傷病はICD10(国際疾病分類第10版)に記載があるも」のと考えると良いかもしれません。もちろん例外もありますのでご注意くださいね。
たとえば、「腹痛」は症状ですが、「腹痛症」とすると傷病名となる例もあります。


話は戻って、この傷病名ですが、「脳内出血による後遺症」であれば傷病名として成立します。
しかし、「後遺症」では何の後遺症かわかりませんし、後遺症によって何が起きているかもわかりません。レセプトの点検をされた時に、傷病名と施術内容などの整合性が問われ、「適応病名無し」と査定されて返戻される可能性も少なからずあります。
同意書をすべて鵜呑みにするのではなく、自分でもチェックできるようになると、より正確な療養費請求ができるようになります。
自分でできる幅を広げていきたいですね。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
0

保険適用の失敗例

腰痛、肩こり、関節の痛みなどに悩む人はかなり多いでしょう。
厚労省の調査でも、腰痛や肩こりが多いという結果も出ています。

ところで、先日とあるマッサージ院さんからこのような相談がありました。
「医師の同意書を持って来院した患者さんの療養費請求をしたが返戻されてしまった。」

「同意書があるから良いのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、よくよく話を聞いてみると返戻されるは当たり前の内容でした。
実は同意書には「椎間板ヘルニアによる腰痛症」と書かれていたのです。

マッサージをすることで、痛みを感じなくなることもあるでしょう。マッサージで体調が良くなることもあるでしょう。さらにはメンタルが安定することもあるでしょう。
マッサージには様々な効果が考えられます。
しかし、「医師か同意書を書いており、効果が期待できるのであれば保険が使えるのでは?」と考えてしまったのがこの失敗の原因です。
ご存知の方も多いと思いますが、マッサージの健康保険対象は、診断名での治療ではなく、症状による治療です。そして、保険の対象となる症状は、

1.筋麻痺
2.関節拘縮

この2つだけです。これ以外には健康保険を適用できません。
つまり、「脳梗塞などの後遺症」や「骨折や手術後の障害で関節の動きが悪い」、「筋肉が麻痺して思い通りに動けない」などの症状でしか健康保険の対象となりません。
前述の「椎間板ヘルニアによる腰痛症」は筋麻痺でもなければ間接拘縮でもありません。
単に「腰が痛い」という症状です。そのため健康保険の適用にはなりません。
言い方を変えると、この院では悪意がないにしても「不正請求をしようとした」とも言えてしまいます。

確かに患者さんが日々の健康維持で健康保険を使えれば負担を大幅に抑えられます。
「保険を使えば安くなるから使わなのは損だ」という感覚で保険を使ってしまうと財源が枯渇してしまいます。(現に枯渇しそうな状況でもあります…。)
財源が枯渇すると本当に施術が必要な人に必要な医療が提供できなくなってしまいます。施術をするにあたって施術者も法令というルールを守り、保険を正しく使うことでより多くの患者さんの役に立ちたいものですね。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
0