国家試験

国家試験という試される場所~その3~

早いもので1月も半ばです。
暖冬とはいいつつも、やはり朝の冷え込みや吐く息の白さには、冬真っ只中を感じますね。
今年のはり師、きゅう師国家試験までもあと1か月半です。

前回のブログで取り上げた問題、いかがでしたか? 問題をもう一度振り返ってみましょう。

28歳の女性。全身倦怠感の増強を主訴に来院した。
1週間前に自宅近くの診療所で妊娠と診断された。
5日前から悪心と嘔吐とが出現し、自宅下経過を見ていたが改善せず、食事摂取が困難になった。
超音波で子宮内に胎嚢と心拍動を有する胎芽とを認める。
血液所見:赤血球430万 Hb14.8g/dl Ht46% 白血球12,100 血小板32万。
輸液を行うこととした。
輸液に加えるべきものはどれか。

a:ビタミンB1  b:ビタミンB2  c:ビタミンB6  d:ビタミンB12  e:ビタミンC

3つの解答プロセスを辿って解答を導いていただきましたが、では解説を少々。

1.出題分野は?

この問題は産婦人科分野の出題と分類されてました。
問題に設定されている患者さんのアセスメントを読んでいけば、妊婦さんに対する対応について、ということはすぐに思いつきますね。

2.解答に必要な知識は?

産婦人科分野の出題ですが、最終的に問われていること、また選択肢として挙がっている内容はビタミンについてです。
ということは、どうやら生化学や栄養関係の知識が必要そうです。

3.では、問題の本質は?

回答までの①②のプロセスを経ると、頭の中には「妊婦」というキーワードが居座っている感覚になります。
ということは、産婦人科の問題なので、これから行う処置(ここでは輸液)について妊婦さんという特殊な状態を考慮することが必要だろうか? と思えてきますね。

ですが、これがこの問題の落とし穴です。
実はこの問題は、「ビタミンB1が糖質代謝に欠かせない栄養素である」ということだけを聞いている、産婦人科の問題と見せかけた生化学、生理学分野の問題なのです。
なので、答えはaの「ビタミンB1」です。

つまり、問題文中に設定された「妊婦」ということも、血液所見も、これはある意味の引っ掛けです。
強いて言うならば、つわりで食事が難しいことから十分なカロリー摂取ができていないことが想像できます。そこから問題文中の「輸液」は高カロリー輸液、すなわちブドウ糖が投与されたと推測し、選択肢にあがっている栄養素と関連させて、体内での糖質代謝と栄養素との関係に関する知識を引き出してくれば答えが出せます。

また、この医療系資格では現場実習が必須ですので、「高カロリー輸液を行う場合にビタミンB1を併用しないと重篤なアシドーシスが発現する」という輸液を実施する上での必須事項に気付いて実習や見学を行った経験も、解答を導く一助になります。


今回、この国家試験問題を紹介したのは、単に引っ掛け問題を紹介したかったわけではありません。
皆さんの日々の治療においても、目に見える症状や患者さんの主訴にとらわれて、問題の本質を見失ってしまっていることはないか、という問いかけでした。
これまでのブログでもご紹介したように、問題を解決するためには情報収集と分析を丁寧に行い、名に見える問題の背景を明らかにすることが必要です。

また、アセスメントを行うと、時に物事はとても複雑に思えてきますが、実は意外と単純なことが問われていたり、障壁となっているということもよくあります。
解決に経験が役立つことももちろんあります。
そのためにも、日々の症例を丹念に診て、気づきを記録し、蓄積することで、それは今日の患者さんのニーズに応えるエビデンスとなるのではないでしょうか。

受験生の皆さん、頑張って!!
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国家試験という試される場所~その2~

七草が過ぎ、成人式のニュースの次はいよいよセンター試験の話題が聞こえてきます。
1月2月は大学を始めとして様々な受験のピークで、特に医療系国家資格の試験は2月から3月上旬に集中しています。今年のはり師、きゅう師の国家試験は2月28日に実施されます。

さて、前回は最近の国家試験の傾向についてご紹介をしましたが、今回も国家試験を話題に取り上げたいと思いますが、いきなりですが問題です。

28歳の女性。全身倦怠感の増強を主訴に来院した。
1週間前に自宅近くの診療所で妊娠と診断された。
5日前から悪心と嘔吐とが出現し、自宅下経過を見ていたが改善せず、食事摂取が困難になった。
超音波で子宮内に胎嚢と心拍動を有する胎芽とを認める。
血液所見:赤血球430万 Hb14.8g/dl Ht46% 白血球12,100 血小板32万。
輸液を行うこととした。
輸液に加えるべきものはどれか。

a:ビタミンB1  b:ビタミンB2  c:ビタミンB6  d:ビタミンB12  e:ビタミンC

この問題もとある医療系資格の国家試験で2015年に出題された問題です。
最近ではこのような状況設定問題の出題割合も増え、またその事例内容や設定条件も非常にリアルになってきています。
単なるペーパーペイシェントの事例検討だけでなく、臨床実習や現場実習で様々なケースに携わって、授業で習った知識と実際の症例とをしっかりと関連付けて理解できているかどうかが解答のキモとなるような問題です。

今回はいきなり答えを出すのではなく、3つの解答プロセスを経て答えを導き出してみましょう。
まずは、この問題はどの分野から出題されているのかを想像しましょう。
次に、問題を解くためにはどのような分野の知識が必要となるでしょうか。
ここまでくればおのずと答えは出てくると思いますが、最後に、問題の本質は何かを考えてみていただきたいと思います。

さて、皆様はどのように考えますか?
久しぶりに学生時代に戻って、受験生気分を味わってチャレンジしてみませんか。
次回のブログで解説をいたします。お楽しみに。
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国家試験という試される場所~その1~

今年も残すところあと10日です。
クリスマスに大晦日、お正月と、何かとイベント続きなこの時期ですが、受験生にとっては最後の追い込みをかける時期でもありますね。
みなさんも、国家試験受験を控えた学生の頃には参考書や過去問題集とつきっきりに勉強されていたことと思います。

医療系の専門学校で教えている友人との話の中で、最近の国家試験問題は単に知識の暗記だけでは点数が取れないぞ、という話題になりました。

百聞は一見にしかず。

問 デング熱を媒介するものはどれか
  a 蚊
  b 蛾
  c ダニ
  d ゴキブリ

皆様なら正解はお分かりですよね?
これはとある医療系資格の試験で、衛生学分野の問題として今年の3月に出題されました。
衛生学では公衆衛生に関する内容も学びますので、感染症や感染経路に関する内容が出題されてもおかしくはありません。
ただ、ポイントなのは内容そのものではなく、内容と出題時期の関係性です。

日本の一夏を騒がせたデング熱、これは2014年の一大ニュースでした。
それから僅か半年後に、こんなピンポイントで出題されたのには非常に驚きますよね。
さらには、同様の出題がいくつもの国家試験で出題されたというのですから。

この問題を解くポイントは、
① 感染は何かを媒介して起こるという原理を理解していること
② 感染を媒介する主要なものを覚えていること。
大きくはこの2点は外せません。
いわゆる試験対策の得意な学生さんならばこの2点をしっかりと押さえて得点できるでしょう。ですが、ここが国家試験に潜む魔物の怖いところ…
『デング熱』という特定の疾患名が突然出題され、それも自らが学んできた専門分野にあまりなじみのない疾患名だったりすると、受験生は一種のパニックに陥り、答えを導き出せなくなるというのです。

ここで第3のポイントが必要です。
それが、いかに情報のアンテナを張っているか、自らの専門分野以外、特に隣接する分野への興味を持っているか、という視野の広さです。
おそらくこの問題も、試験委員の皆様の気の迷いなどという単純なものではなく、自らの専門分野にとらわれすぎに情報収集して、自らの分野にフィードバックできる力をもっているかどうか、ということを問われているような気がします。

このようなことが国家試験の場でも問われ、国家試験に含められている意味が少々変わり始めたように思います。
次回もそのような事例をご紹介したいと思います。

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